事案の概要
この事件では、Aさんは数千円分の商品を盗んだとして窃盗の容疑で逮捕されました。
Aさんはこれまでも万引きを繰り返してきました。
罰金、執行猶予付き実刑判決、実行猶予5年付き実刑判決を受け、今回はその執行猶予中の犯行でした。
このような前科・前歴があるため今回起訴されれば実刑判決が下されることはほぼ確実でした。
窃盗を繰り返す場合、窃盗癖やクレプトマニアと呼ばれることもありますが、精神的な問題や認知症などが関係している場合もあります。そのため私は注意深くAさんの話をきき、その挙動も注意しました。
するとAさんと話していて感じたことがありました。本人や関係者から聞き取りをした結果、Aさんには精神障害や発達障害、鬱などを抱えていることが分かりました。
私はAさんが今の状態で刑務所に行くことよりも、専門の医療機関や社会福祉機関に繋ぎ専門家による適切な対処を行った方が、Aさんの更生に繋がるのではないかと思い、刑務所に送ることは避けるべきだと考えました。
そのため、なんとしても刑事裁判を避け、不起訴処分を目指すことを活動方針としました。
担当弁護士
事件の経過
家族と連携してAさんの症状や障害を確認し、治療方針を立てました。
他方で、万引き(窃盗)の被害者と連絡をとり、Aさんに代わり謝罪するとともにAさんの状況等を説明しました。
その結果、示談が成立しただけでなく、検察官に対する寛大な処分を求める嘆願書までいただくことができました。
検察官との意見交換と不起訴意見書の提出
わたしたちは担当検察官にすぐに連絡をとり、Aさんの精神障害などの状況と更生のためのプランを説明しました。
そのうえで、被害者との示談書、被害者からAさんの寛大な処分を求める嘆願書を送付し、今回は不起訴処分が相当であるとの意見を伝えました。
処分結果
翌日検察官から連絡があり、これから釈放すると連絡がありました。
総括
この事例は、起訴されれば実刑はほぼ免れることができない状態でした。
Aさんには自己の犯行は決して許されることではないと理解してもらう必要がありますが、他方で、刑務所に入れるだけでは解決できない問題があると思いました。
Aさんが窃盗を繰り返す原因の一部は精神障害、発達障害などとも関係があると感じました。
そのため、Aさんが二度と同じ過ちを犯さないためには何が最善であるかを考えて弁護活動を行いました。
また弁護活動を通じてAさんの家族や親族と問題意識を共有でき、今後は親族一丸となってAさんの更生に協力するという言葉もいただけました。
<注意事項>関係者や事件が特定できないように必要な場合には、事案の性質が変わらない範囲で事実を一部変更している場合などがありますので予めご了承ください。